M2の泉 裕隆さんの論文がもうひとつアクセプトされ、オンライン掲載されました。
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Izumi Y, Yano S (2025) Can parasitized diamondback moth larvae avoid ant attacks? Ecological Entomology (in press)
寄生蜂は、生きた寄主の体内外で成長しますが、その間に寄主が捕食されると、寄生蜂も同時に捕食されてしまいます。高い運動能力で捕食を回避する寄主に寄生した場合、寄生蜂が寄主の体内を食い荒らすことで運動能力が低下し、寄主ごと捕食されるリスクが高まると考えられます。コナガ Plutella xylostella の幼虫は、イモムシでありながら素早く飛び退いたり、葉縁からぶら下がったりといった曲芸的な捕食回避行動をとります。私たちは、寄生蜂コナガサムライコマユバチ Cotesia vestalis に寄生されたコナガ幼虫は、ジェネラリスト捕食者であるクロヤマアリ Formica japonica からの捕食を回避しにくくなっていると予想しました。
実験の結果、ぶら下がり能力は寄生の影響を受けていませんでしたが、飛び退き能力は寄生によって低下し、アリによる捕食を受けやすくなっていました。つまり、コナガサムライコマユバチは、クロヤマアリによるコナガの捕食を促進していると考えられます。コナガの死亡要因に関する従来の研究では、捕食された個体が寄生されていたかどうか、あるいは寄主ごと捕食されて寄生蜂の個体数が減るかどうかがが、しばしば考慮されてきませんでした。本研究は、これまでの研究が捕食の影響を過大に、寄生の影響を過小に評価していた可能性を指摘しました。